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感情とストレスの関係

ポジティブ感情がストレスを打ち消す

 「S型遺伝子」と「L型遺伝子」のどちらの方が良い悪い、また、「ポジティブ」と「ネガティブ」のどちらの方が良い悪いというものでは決してありません。しかし、S型遺伝子の特性である不安や恐れなどのネガティブな感情は、「この状況を回避しなくてはいけない」という危機を察知して鳴らされる本能的なシグナルのようなものですので、こうした不快な感情が持続すると、その感情自体がストレスを引き起こす要因になってしまいます。
 ストレスは心身に様々な反応として表面化しますが、例えば、血圧上昇や心拍数増加、筋緊張、末梢発汗といった生理的な変化のほか、頭痛、めまい、肩こり、腰痛、胃痛などの身体症状を引き起こします。さらに慢性化すると、高血圧、不整脈、心筋梗塞、慢性疼痛消化器疾患などに発展するリスクが高まります。
 その一方で、ポジティブな感情は健康に良い影響を与えることが近年の研究で明らかになっています。ポジティブな感情とストレスの関係性についての研究も数多くありますが、中でも心理学者バーバラ・フレドリクソン博士が行った「ポジティブ感情がストレスを打ち消す効果」を検証した次の実験が有名です。
 まず、実験に集まった参加者に「これから1分間あげるのでスピーチの準備をして欲しい」と伝えます。
その上で、スピーチはビデオで撮影され、のちに参加者同士で評価するとも言い渡します。その結果、参加者の不安は高まり、心拍数増加や血管収縮、血圧上昇が起こりました。
 次に、それぞれの参加者に対して、ランダムに①「楽しい映像」、②「満ち足りた気分になる映像」、③「何の感情も起こらない映像」、④「悲しい映像」の4つのうちの1つを見せます。すなわち、①と②がポジティブな感情を引き起こす映像、④がネガティブな感情を引き起こす映像、③はそのどちらでもないニュートラルな映像ということになります。そして、映像を見た後にそれぞれの参加者の生体情報を調べました。実際にはスピーチを行わせることはしません。この実験は映像を見た後の後の生体変化を調べることが狙いだったわけです。
 その結果、①と②のポジティブな感情を引き起こす映像を見た人は、何の感情も起こらない映像や悲しい映像を見た人に比べて心拍数が急速に回復しました。つまり、ポジティブな感情にはストレスを打ち消す効果があることがこの実験で示されたのです。


生活を楽しむ人は循環器病になりにくい 

 日本においても、ポジティブさと健康の関係についての調査研究はいくつも行われています。注目すべき調査の1つに厚生労働省研究班が発表した「生活を楽しむ意識が高い人ほど心筋梗塞などの循環器病になるリスクが低い」という調査結果があります。調査対象となったのは、循環器の病気やがんの既往歴がない40~69歳の男女約8万8,000人。研究班はこれらの人に「生活を楽しんでいると思うか?」というアンケートを行い、約12年間にわたり健康状態の追跡調査をしました。
 その結果、例えば男性の場合では、生活を楽しむ意識が「低い」グループは、「高い」グループに比べて循環器病の発症リスクが1.23倍、死亡リスクは1.61倍であることが分かりました。
 この調査ではもう1つ、とても興味深いことが明らかになっています。生活を楽しむ意識が「高い」グループでは、週に1回以上の運動習慣がある人が多く、喫煙習慣が少ないなど、健康的な習慣を維持している傾向が強かったのです。
 一般的に、ストレスが多く、ネガティブな感情になっている時は、イライラして暴飲暴食に走ったり、アルコールやタバコで気分を紛らわすという人も少なくありません。しかし、ポジティブだと心に余裕が生まれ、行動変容を始めることに積極的になります。ポジティブな人は、「食事に気をつけよう」、「禁煙しよう」、「運動しよう」という意識が生まれて自然とより良い生活習慣が身に付いたり、もともと健康的な生活習慣を維持できているために、結果として病気の発症や進行が抑えられているのではないかと考えられます。


Dr.池田義雄 健康長寿のための肥満・糖尿病セルフコントロール 健康ダイヤルとは 無料プレゼント 主な生活習慣病 予防・改善 リンク集