健康ダイヤルweb

[運営] ドクターフォーラム出版
健康ダイヤルプロジェクト
〒170-0013 東京都豊島区東池袋2-60-2 パークビル4F
TEL:03-3984-2421 FAX:03-3590-4927

ウィズコロナ時代を生きる 

日本人の幸福度

 新型コロナウイルスが出現してからまもなく4年―。世界的にコロナとの共存を図る「ウィズコロナ」に大きく舵が切られています。このような先行きが不透明な時代に突入している今、私たちは日々の生活の中で多くの不安を抱え、「幸せ」を感じ取ることが難しくなってきています。
 国連の2022年「世界幸福度ランキング」によると、日本は2021年版の56位から2ランクアップしたものの54位という結果になり、調査開始以来、長年にわたり低いポジションに位置しています。
 では、そもそも「幸せ」とはどのような状態のことを指すのでしょうか?幸せをどう捉えるのかは人それぞれですが、近年では、「ウェルビーイング」という考え方が広まっています。ウェルビーイングとは、世界保健機関(WHO)が定義しているように、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態にあること」で、これこそが「幸せ」な状態を的確に表す言葉としてよく使われています。
 ウェルビーイングには、客観的なものと主観的なものがあります。「客観的ウェルビーイング」は、健康寿命など数字で測れるものであるのに対し、「主観的ウェルビーイング」は、人生の幸福度や充実度、満足度などを自分自身で評価するものです。先の世界幸福度ランキングの結果を詳しく見ると、日本では「人生選択の自由度」と「他者への寛容さ」の数値が著しく低く、「健康寿命」や「社会的支援」などの項目に関しては高い数値となっています。つまり、客観的ウェルビーイングは高いにもかかわらず、主観的ウェルビーイングが低いということが日本の特徴です。


幸せを感じにくい国民性

 日本は、世界的にも高い長寿を誇り、他国に比べれば社会保障制度も充実しています。また、海外の人たちからは、「日本は安心・安全な国で快適な暮らしができる」と羨ましがられるほどですが、幸福だと感じる日本人が少ないのなぜなのでしょうか?
 その理由の1つとして、日本人の生まれ持った「遺伝子」が関係していると考えられています。別名、「幸せホルモン」と呼ばれる「セロトニン」という神経伝達物質をご存じでしょうか?セロトニンが脳内から減ってしまうと、人は不安を感じたり、気分が落ち込みやすくなってしまいます。つまり、人が幸福を感じるためにはセロトニンの分泌が重要だということです。
 セロトニンの分泌量を左右するのが、「セロトニントランスポーター遺伝子」―。この遺伝子には、セロトニンの分泌量の少ない「S型」と、分泌量の多い「L型」の2種類があり、その組み合わせによって、「SS型」、「SL型」、「LL型」の3つに分類されます。SS型に近いほど不安や恐れといったネガティブな感情になりやすく、LL型に近いほど安心などのポジティブな感情になるといわれています。SL型はその中間のタイプになります。そのため、S型が「不安遺伝子」とも呼ばれています。
 遺伝子の組み合わせパターンは国や民族によって差がありますが、日本人はSS型遺伝子を持っている割合が極めて高いといわれています。日本人にSS型遺伝子が多い理由には諸説あり、様々な仮説が立てられていますが、その中で最も有力視されているのが災害の多さとの関係です。地震、津波、台風、火山の噴火など、太古の時代から日本は世界有数の「災害大国」でした。もしも、「何とかなるだろう」と楽観的に構えていたら、いざという時に対応することができず、死の危険にさらされてしまいます。頻発する災害から自分や家族の身を守るため、日本では不安を感じやすいSS型遺伝子を多く持つ人が生き残ってきたのではないかという説です。
 お分かりのように、不安を感じることが悪いというわけではありません。不安遺伝子をフルに働かせ、自然の些細な変化を感じ取ることは、災害が多発する国で暮らすための生存戦略として大いに役立ってきたのです。ただ、災害の発生をある程度は予測できるようになった今、過剰な不安や心配は必要なものではなくなってきており、現代ではこのS型遺伝子の特性がむしろ「幸せ」の足を引っ張ってしまっているのです。


Dr.池田義雄 健康長寿のための肥満・糖尿病セルフコントロール 健康ダイヤルとは 無料プレゼント 主な生活習慣病 予防・改善 リンク集